SMOKE&CANDY《短》
抓られた來貴は右手の動きを止めて唇を離し、不服そうな顔を私に向けた。
アンタにそんな顔をする権利はない、と文句の一つでも言ってやりたいところだけれど。
あいにく私は酸欠状態の脳と、汗が吹き出る身体を落ち着ける作業で手一杯。
なのでいつの間にか私の真横にピッタリとくっついて座る來貴を、睨みつけることしか出来なかった。
「頼夢、大丈夫? 感じちゃった?」
そう、まだセーラー服の中に入っていた右手でウエスト部分を撫でながら、私が大嫌いなクスクス笑いをする來貴。
……思いっきりぶん殴ってやりたい。
だけど残念なことに利き手は拘束されているし、身体はフラフラするし、今の私には來貴をぶん殴る余力は残っていない。
私は殴ることを諦めて、さっきの倍以上の力で來貴の腕を抓ってやった。