SMOKE&CANDY《短》
脳と身体に酸素が行き渡り、吹き出していた汗も幾分かましになり。
拘束されていた右手が解放された頃。
「來貴! あんた何考えてんのよ!?」
私は隣に座る変態男を怒鳴り散らした。
考えれば考えるほど、私があんなことをされる理由はなくて。
しかも唇だけならまだしも、遠慮も了承もなく人の身体を触って。
冗談にしてもその限度を超えている。
「別に。したかったからしただけ。頼夢だって気持ち良さそうにしてたじゃん」
怒り狂う私に対して來貴は飄々と、新しい飴を口に入れて転がした。
その姿に思わず右手で拳を作ってしまう。
けれど、その拳を來貴に向けられないのは來貴の言葉に“事実”があるからで。
私はしばらく右手の拳を震わせながら、飴を楽しげに転がす來貴を睨み続けた。