SMOKE&CANDY《短》
「そんなこと知らないわよ」
その色っぽさに心臓が高鳴ったけれど。
それを表情に出さないように気をつけながら、サラリと言葉をはきだした。
來貴を相手にするときは興奮したら負け。
私を怒らせることが趣味なんだから。
冷静に冷静にと自分に言い聞かせる。
「ふーん。じゃあゆっくり教えてやるよ。頼夢の部屋でな」
そんな私の前に掲げられたのは銀色の鍵。
よくある何の変哲もない鍵だけど、その鍵につけられている赤い鈴のキーホルダーに、私は見覚えがあった。
そしてそれがチリンと音を奏でたとき。
私の血圧は間違いなく上昇した。
「ちょっと!! なんであんたが家の鍵を持ってんのよ!?」
その鍵の居場所であるはずの、左のポケットを探りながらそう怒鳴る。
私の冷静でいようという努力は、たった十五秒で水の泡となった。