SMOKE&CANDY《短》
ポケットをどれだけ探ってもスカートを揺らしても、聞き慣れた鈴の音が聞こえない。
だけどまだ來貴の手に持たれている鍵が、自分の家の鍵だと信じたくなくて。
否定してほしくて來貴に目を向けると、私のそんな視線に気付いたのか。
來貴は得意げに笑うと、しっかりと鍵を自分の拳の中に握った。
「頼夢って大事な物は左のポケットに入れる癖があるって、知ってた?」
そして私も知らない私の癖を教えてくれた。
……やられた。
こいつは制服の中だけではなく、ポケットの中まで探っていたらしい。
本当、手癖が悪いにも程があるでしょ。
「ほら、早く帰るぞ」
有り得ないことの連続で呆然と突っ立っていた私の手を握って。
來貴は嬉々としながら歩き出した。
私の家に向かって。