小さな殺人鬼
「ねぇ、飛鳥。屋上に来てもらえる?」

零都に言われて、飛鳥はゆっくりついていった。

「…何ですか?」

朝日が、山からゆっくりと顔を出す。
日の出の時間だ。

「…分からない?」

零都の言葉に、飛鳥は首を傾げた。
分からない?と聞かれても、何が…。

「俺、飛鳥が好き」

まわりの音が、一瞬消えた。
飛鳥は、状況を把握していない。

「ずっと、ずっと。飛鳥が入って来た日から。まぁ、飛鳥には嫌われていたっぽいけどね…」

確かに。
面接の日、歳も変わらなさそうな彼に、開口一番
「そんなアホ面して突っ立ってないで、中に入ったらどうですか?お嬢さん」

と言われたのだから。

「アハハハ…だって、面接の日の印象が…」

それに、仕事中だって意地悪ばかり言ってきたし。
名前は“日野飛鳥”ってフルネームで呼び捨てだし。

と、思ったけど言わなかった。
< 36 / 42 >

この作品をシェア

pagetop