ブルーストーンは永遠に
そのうち、ぼくは中学生になっていた。
大きめに発注した制服のウエストは、両手の手のひらがすっぽりと隠れてしまうぐらいぶかぶかで、ベルトで締めると内側に行き場をなくした部分がへその前辺りでしわをつくった。
当たり前だけど新しくなったのは服装だけではない。
先生も、校舎も、環境も、すべて変わったし、新しい友達も増えた。
部活はサッカー部に入った。
小学校からやっていたものをエスカレーター式にそのまま続けただけだ。とはいえ、もちろん嫌いだったわけではない。
サッカーすること事態は楽しかったし、家の前で夜に一人黙々と練習に老けることだってあった。
そしてサッカーをやったおかげで、内気なぼくにもずいぶん友達ができた。
それに今年はワールドカップのフランス大会が開催されることになっていて、サッカーファンはたまらない毎日が迫っていた。
サッカー部の奴らとはこの話を通して、普通の生徒とは遅いペースながらも、少しずつ仲良くなっていった。
入学当初は何組のあいつがかわいいとか、何組のあいつは喧嘩が強いらしいとかそんな話で盛り上がっていた。
半月経つと、そんな話はほとんど教室のかたすみに風化して縮こまってしまい、だれも蒸し返そうとする奴はいなかった。
それでも次のネタなんてものは誰からともなく沸きあがってくるのもので、学校でのネタ話は尽きることはなかった。
ぼくの中学生活はそれなりには楽しかった。
でも、そんな環境の変化など関係ないぐらい、中学に入ってからずっとぼくを悩ませ続けていた夢は眠りにつくと、あいかわらずその映像を見せ続けていた。
それは山岳に掛かる霧が徐々に空中に溶け込んで消えていくように少しずつ鮮明になっていくようだった。
今日も部活でくたくたになり、ご飯を食べるとベッドに横たわる。
宿題もやる気になれず、ただ寝そべってテレビを観ていた。
すると、うとうと、となってしまい、意識が睡魔に押され始めて、まぶたが閉じそうなほど重くなってきた。
夜雨が窓ガラスを静かに叩き線をつくる音をかろうじて鼓膜で受け止めながら、次第にまぶたは完全に幕を下ろしていった。
眠りに落ちるとぼくはまた夢路に誘われた。
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