ブルーストーンは永遠に
三日前に見た夢と同じだ。でも以前よりおぼろげていたと頃がほぐれているようだった。
~ここはどこだろう。~どこの山だろうか。
空を見上げると赤、緑、黄の三色の虹が、近目でもくっきり見えそうなほど、山の稜線にきれいに架かっていた。
高原には遠足なのかたくさんの園児たちがはしゃぎまわっている。その中で幼い頃のぼくは、内気な性格のまま野原で一人四つ葉のクローバーをさがしていた。
地面の一面に張り付いたクローバーは、しゃがむと大地の匂いと、草の匂いとがほどよく混ざり合ったかぐわしさがあった。
ぼくは周囲の騒ぎ立てる雑音も気にせずに、地面にこびりついたまま丁寧に一つずつ見分けていた。
やがて背後から草を踏むのをためらうぐらいの柔らかい優しげな足音が近づいて来るのを感じた。
ぼくはかぼそい首をめぐらした。
その子はぼくと同じ幼稚園なのだろう。
水色のチェックの園児服を着ていた。
屈託のない笑顔がぼくの微笑を誘った。
その子は弾むような声でぼくに言った。
「コーちゃん、これ見て」
差し出したもみじの葉ほどのいたいけな両手の手のひらには、青い丸みを帯びたきれいな石のようなものが二つあった。
引き出しにあるあの石だ、と夢をみているぼくは思った。
両手はなぜか濡れていた。
手の甲から水滴が等間隔で滴り落ちている。
「これなに? 石? すごくきれい」
ぼくがそう言うとその子は鼻を軽くこすって、ちょっぴり得意げな顔になった。
幼稚園児のぼくはとりつかれたように石に見入っていた。
石はうすい青がほどよい透明感を放っていて、飲みたくなるほどの色合いだった。
青く濡れているせいか陽射しを受けて、いっそう身をキラつかせていた。
「どうしたのこれ、どこでみつけたの?」
「うんとね、あっちにある小さな川の中でキラキラひかってたから、なにかなと思ってひろったらこれだったの」
「へぇー」
夢の中のぼくは、目を大きく見ひらけていた。
「ともだちだから、コーちゃんにもうひとつのほうあげる」
迷いのない、いたいけな笑みを浮かべたまま、片方の青い石をさし出してきた。
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