ブルーストーンは永遠に
通学路には昨日の雨がまだ半渇きで、濡れた地面は社会の授業でやった、どこかの国のかたちに似ていた。
蜘蛛の巣のように張った通学路には校門が近づくにつれ、学生服の着た中学生が、私語を撒き散らしながら、行儀の悪いアリの行進のように列を成して門の中に入っていく。
教室の中は今日も変わらず騒がしかった。いくつかの女子のグループが甲高い声を出してはしゃいでいる。
ぼくは肩に掛けていた鞄を横のフックに引っ掛けた。
朝礼まで二、三人の輪に入った。
中学生になっても楽しみなんてそれほどなかったけど、これからのわずかの時間、ぼくにとって至福が待っていた。
ぼくは友達の話を聞き流しながら廊下を見ていた。
廊下の窓からは綿菓子をちぎったような雲が無数に散りばり漂っている。
その空の下には小高い丘の上にある河童神社があった。
周りは木々に覆われ、てっぺんに神社の境内があり、遠くからその景観をのぞむと、それがちょうど河童の禿げ上がった頭のように見えることからその名がついた。
廊下に視線を戻すと、待ち焦がれた人影が飛び込んできた。
高野ゆかりだ。
女子からも人気があるのだろう、通る度に友人と談笑している。
この瞬間ぼくはどきりとする。
顔は一見薄く日焼けしていて活発健康的な印象を植え付けるけど、品も感じる清楚さも持ち合わせていた。
美術館によくある少女の絵画のような美人顔で、当然学校では男子に人気があった。
ぼくは中学に入った頃から高野ゆかりが好きだった。
しかし話したことどころか、挨拶も交わしたこともなかった。
そしてぼくが高野ゆかりを好きだという話も当然誰にもうちあけてはいない。
ぼくはこの時ばかりは意識を遮断して彼女と二人だけの世界に入ってしまう。
そしてぼんやりとしながら、まばたきでシャッターを切っている。
「おい、航介」
ぼくの耳元で談笑していた友達が、両手でメガホンを作りながら、意識を覚ますようにがなっていた。
「あっ、ああゴメン。なに」
「得点王は誰になると思うって、さっきから訊いてんの」
「そうだな誰だろうな。やっぱロナウドじゃないか。あれは抜けてるよフォワードとしは」
蜘蛛の巣のように張った通学路には校門が近づくにつれ、学生服の着た中学生が、私語を撒き散らしながら、行儀の悪いアリの行進のように列を成して門の中に入っていく。
教室の中は今日も変わらず騒がしかった。いくつかの女子のグループが甲高い声を出してはしゃいでいる。
ぼくは肩に掛けていた鞄を横のフックに引っ掛けた。
朝礼まで二、三人の輪に入った。
中学生になっても楽しみなんてそれほどなかったけど、これからのわずかの時間、ぼくにとって至福が待っていた。
ぼくは友達の話を聞き流しながら廊下を見ていた。
廊下の窓からは綿菓子をちぎったような雲が無数に散りばり漂っている。
その空の下には小高い丘の上にある河童神社があった。
周りは木々に覆われ、てっぺんに神社の境内があり、遠くからその景観をのぞむと、それがちょうど河童の禿げ上がった頭のように見えることからその名がついた。
廊下に視線を戻すと、待ち焦がれた人影が飛び込んできた。
高野ゆかりだ。
女子からも人気があるのだろう、通る度に友人と談笑している。
この瞬間ぼくはどきりとする。
顔は一見薄く日焼けしていて活発健康的な印象を植え付けるけど、品も感じる清楚さも持ち合わせていた。
美術館によくある少女の絵画のような美人顔で、当然学校では男子に人気があった。
ぼくは中学に入った頃から高野ゆかりが好きだった。
しかし話したことどころか、挨拶も交わしたこともなかった。
そしてぼくが高野ゆかりを好きだという話も当然誰にもうちあけてはいない。
ぼくはこの時ばかりは意識を遮断して彼女と二人だけの世界に入ってしまう。
そしてぼんやりとしながら、まばたきでシャッターを切っている。
「おい、航介」
ぼくの耳元で談笑していた友達が、両手でメガホンを作りながら、意識を覚ますようにがなっていた。
「あっ、ああゴメン。なに」
「得点王は誰になると思うって、さっきから訊いてんの」
「そうだな誰だろうな。やっぱロナウドじゃないか。あれは抜けてるよフォワードとしは」