ブルーストーンは永遠に
そのままベットに横たわった。父は残業続きで今日も遅かった。
母さんは最近夜な夜な外出する日が多くなった。
行き先は告げていかない場合がほとんどだったけど、中学生のぼくにでもわかるぐらい男の匂いがプンプンした。
会話を失った両親は、言葉は交わすものの、互いの反応は薄く、常に見えない壁が二人の間にあった。
(離婚するかもな)と子供ながらに思った。
どっちに引き取られるのだろう。
妹とぼくは離れさせられるのだろうか。
もし引っ越すなら、学校も転校しないといけなくなるのかもしれない。
(絵理は今何してるだろう)とふと妹の事が気にかかった。
そういえば、近頃妹ともあまり会話を交わさなくなった。
ドアをノックしようとしようと思う日もあるけど、クールな年頃と変な意地みたいなものが邪魔しているのか、単に関心がそこまでないのか、とにかくノックできなかった。
次第に孤独にも似た感情が心の中を駆け巡り始めると、ぼくはそれを掻き消すかのように部屋の明かりを消して眠りに就いた。



「あのね、これがあった場所をコーちゃんにも教えてあげる」
「ほんとっ?」
また、この夢だ。ぼくは苛立ちを心の舌打ちに変える。
(夢の中で行われているこの出来事は本当にあったのか)でも見続けていれば、謎は解けるかもしれない。
映像が、流れ込んでくる。
それはビデオの再生ボタンを押したかのように、当たり前のようにはじまった。
「コーちゃんこっちだよ」
もみじの手がもみじの手をつなぐ。
その子はぼくの手を引っ張ると森の中へ入っていく。
みんなから離れていく不安を感じたが、引っ張るその手はその感情を吸い取るかのように消えていた。
ひときわ大木のすぐそばに、小さな竹の子がニョキっと生えている。
「この、たけのこが目印なんだよ」
その子は小さな指で竹の子を指した。
園児服に付けられているネームプレートが、くっきりと浮かび上がっていた。
【ゆりぐみ】と書かれていた。
下の名前までは読もうとするとモヤが薄くかかって見えない。
「みつけた所はもう少し先だよ」
そう言うと、その子は奥へと入っていく。
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