ブルーストーンは永遠に
十メートルほど歩くと小川のせせらぐ音がぼくの鼓膜に触れた。
「ここで、みつけたんだ」
その子はまたちょっぴり得意顔になり、熱心に澄んだ川面を透かすように見ている。
幼いぼくもしゃがみこんで、透き通る川の水を覗き込んだ。まだいくつかきれいなガラス石があった。
川底近くには赤色のワインボトルや緑色っぽい透明のカクテルのビンが何本か沈んでいた。
それらの割れた破片なのだろう。周りには年月と共に角がとれてまるまったガラス片が川底で散らばっていた。
ぼくはガラスが輝く川面に夢中になって、さっき貰ったばかりのガラス石を水中にもぐりこませて見比べた。
それでもいまもっているガラス片が一番きれいだった。
男の子が立ち上がり、ぼくと向かい合わせになるように立った。
澄んだ笑顔と共にガラス石を手のひらに広げて見せた。
夢の世界だと自覚していても、心の中が癒されるかのような屈託のない笑顔だった。
笑みを返したが、内気なぼくははにかんだ微弱な笑顔になってしまっていた。
ぼくは小さい頃、笑顔を作るのが不得意な幼児だった。
「コーちゃん、ぼくたちはいつまでも、ず~っと、おともだちだよ」
「うん」
ぼくも手のひらを差し出し広げた。同じ形、同じ色彩のガラス石が開いた花のつぼみのように現れる。
「これが、ぼくたちのともだちのあかし。おおきくなっておとなになっても持っていようね。やくそくだよ」
「うん、ずっともってるね」
友達が少なかった幼いぼくは、たとえ嘘だとしてもその言葉がうれしかった。心がじんわりとなって全身を包んだ。
その気持ちをぼくは数年の生活の中で隅に追いやって塗り固めてしまったのだろうか。
もし、これが実際に起きていた話だとすると、この子はいったいいまどこで何をやっているのだろう。
幼稚園が一緒だとすれば近くには住んでるはずだ。
でも引っ越してる可能性だってある。
そうなったらわかりっこない。
それにそもそも幼稚園児が交わした戯言だ、覚えてる方がおかしい。
夢はそうこう考えているうちに途絶えた。
蝉の鳴き声が夏のはじまりを告げていた。
グラウンド一面に強烈な陽射しを浴びせ、そこにたたずむぼくたちを苦しめる。
夏休みになるとクラブ活動は午前と午後に振り分けられた。
「ここで、みつけたんだ」
その子はまたちょっぴり得意顔になり、熱心に澄んだ川面を透かすように見ている。
幼いぼくもしゃがみこんで、透き通る川の水を覗き込んだ。まだいくつかきれいなガラス石があった。
川底近くには赤色のワインボトルや緑色っぽい透明のカクテルのビンが何本か沈んでいた。
それらの割れた破片なのだろう。周りには年月と共に角がとれてまるまったガラス片が川底で散らばっていた。
ぼくはガラスが輝く川面に夢中になって、さっき貰ったばかりのガラス石を水中にもぐりこませて見比べた。
それでもいまもっているガラス片が一番きれいだった。
男の子が立ち上がり、ぼくと向かい合わせになるように立った。
澄んだ笑顔と共にガラス石を手のひらに広げて見せた。
夢の世界だと自覚していても、心の中が癒されるかのような屈託のない笑顔だった。
笑みを返したが、内気なぼくははにかんだ微弱な笑顔になってしまっていた。
ぼくは小さい頃、笑顔を作るのが不得意な幼児だった。
「コーちゃん、ぼくたちはいつまでも、ず~っと、おともだちだよ」
「うん」
ぼくも手のひらを差し出し広げた。同じ形、同じ色彩のガラス石が開いた花のつぼみのように現れる。
「これが、ぼくたちのともだちのあかし。おおきくなっておとなになっても持っていようね。やくそくだよ」
「うん、ずっともってるね」
友達が少なかった幼いぼくは、たとえ嘘だとしてもその言葉がうれしかった。心がじんわりとなって全身を包んだ。
その気持ちをぼくは数年の生活の中で隅に追いやって塗り固めてしまったのだろうか。
もし、これが実際に起きていた話だとすると、この子はいったいいまどこで何をやっているのだろう。
幼稚園が一緒だとすれば近くには住んでるはずだ。
でも引っ越してる可能性だってある。
そうなったらわかりっこない。
それにそもそも幼稚園児が交わした戯言だ、覚えてる方がおかしい。
夢はそうこう考えているうちに途絶えた。
蝉の鳴き声が夏のはじまりを告げていた。
グラウンド一面に強烈な陽射しを浴びせ、そこにたたずむぼくたちを苦しめる。
夏休みになるとクラブ活動は午前と午後に振り分けられた。