みぃつけた
「雅也、雅也」
ぼーっとしていた俺を、鼻声になった声が呼んだ。
振り向くと、目を真っ赤にした紗英子が立っていた。
「紗英子…」
「義昭が死んじゃったよぅ」
再び涙を流してなく紗英子を、俺は優しく抱きしめた。
紗英子も俺も、もちろんみんなもなにも出来なかった。
結果として、義昭が死んだ。
…そう考えたら、泣きたくなるのが人間というものだと思った。
「おい、佐伯!義昭が死んだっていうのに、紗英子とイチャついてんじゃねぇよ」「ははは!!」
俺達を見て、水野達が冷やかした。
紗英子は恥ずかしそうに俺の胸にしがみついた。
俺は水野を睨みつけた。
「おいおい、何ムキになってんだよ」「義昭くんが死んでそんなに悲しいか、ははは!」「佐伯の親友だったからなー」
水野たちはまたAVの話を始めた。
…コイツらは、本当に馬鹿な奴らだ。
俺が拳を握りしめていると、その手に紗英子は優しく手を置いた。
「ここで怒ったら、雅也がやられちゃうよ」
小声で紗英子はそういうと、俺をの目を見つめた。
「…そうだな」
俺は拳を緩めた。