princess~私の宝物~

「・・・待って・・利・・香」

声もちゃんと出なかった。私はしばらくボーっと立っていた。ただ、利香が涙をこらえた理由が知りたかった。

すると他の先生が、

「おい。まだいるのか?早く帰れ」
「あっ・・・・はい」

私は教室に戻ってカバンを持ち家に帰った。利香の机にはカバンも何もなかった。

先に帰っちゃったか・・・。

帰り道、すごく長く感じた。その日は利香の家の前を通らず、わざと遠回りして帰った。

利香が言った言葉、涙ぐむ顔が頭から離れない。あんな利香を見たのは始めてだった。明日からどうしよ、何て話そう・・・・。

その日の夜はよく眠れなかった。
< 44 / 138 >

この作品をシェア

pagetop