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◎ヒーロー誕生
ヨッタと貴ボン
朝の気持ちの良い太陽が照らす工業地帯。
その一角に“何出弥(なんでや)製作所”があった。
「ういっす。貴ボン。」
「おうヨッタ、お早よー。」
その工場内、のほほんと会話を進める二人がいる。
黒髪にツンツン頭、アライグマそっくりな方がヨッタ。
そして金髪のスーパーリーゼント、見た目タコの様な男が貴ボンだ。
「ふあー眠いなー。」
ヨッタが大欠伸(あくび)をかく。
「ヨッタちやん、また徹夜だべ?ゲームか…」
貴ボンはさめた視線を、ヨッタに送る。
「うん、あと少しでクリアーなんだよね。」
ヨッタは、昨晩話題の新作ゲーム“ガリガリマン7”を、朝四時までやっていたのだ。
そう彼はゲーム大好き・特撮ヒーロー大好きのオタクであった。
「馬鹿だなヨッタちやんは、ゲームばっかやってると頭に悪いぜ。」
「貴ボンにだけは言われたくないね。ギャンブルしか頭にない奴には。」
「げへへ…俺の『左右の目』は一発逆転だかんな。」
「…座右の銘(ざゆうのめい)だろ。」
ヨッタがツッコんだ。
「まったく、ギャンブラーの典型じゃんか、一発逆転ってて言っても、トータルでいったら大負けなんだろ。」
「ま…まあな。だがよ、それを取り返すチャンスが現れたんだよ。」
不気味な笑みを浮かべ貴ボンは笑う。
「何言ってんのさ、そんな旨い話…あ!新手の詐欺(さぎ)にあったんだろ?」
訝し(いぶかし)がるヨッタをよそに、貴ボンは、ヨッタに肩を組んでくると、耳元に囁いた(ささやいた)。
「聞きてーべ?」
「…別に。」
だが、ヨッタはあっさりと断る。