???
 ポチャン、ポチャン。

 薄暗い、廃工場内に、水滴の音が響く。

「ううう…」
 そこにザイーテンの姿があった。酷くうなされているようだ。


 ここは遥か南に南下した小島だった。


「何を、うなされているんだろ?」
 ザイーテンの傍らには、京子が座っていた。

「ソ…フィア…逃…げろ、“ソフィア”!」
 ザイーテンが叫び、ハッとその身を叩き起こした。

「気付いたんですね。ずっと眠っていたから、どうしたのかなって思って…」
 京子がホッと息を吐いた。

「こ…恐く…ないのか、お…れが。」
 ザイーテンが京子を睨む。

「最初は恐かったけど…あなた、私を助けてくれたんだよね。」
 京子が言った。


 京子は力こそ無いが、何事にも動じない、強い意志を持っていた。…只単に鈍いだけなのかも知れないが…


「…済まな…かった。逃げる…のに必死で…おまえは…必ず返してやる。」
 ザイーテンが言った。

「さっき、うわごとで呼んでたソフィアって、知り合いの名前?」

「私が…ソフィアの名を…」
 ザイーテンは目を閉じる。

「ごめんなさい。…言いたくなければ、別に。ただ、何度も呼んでいたから。」
 言って京子は体育座りで黙り込んだ。


 工場内は、沈黙に包まれた。

「ソフィア…美しい女だった。…君に…少し似てるの…かも知れない…
 やがて、ザイーテンが話し出した。
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