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 そして数年後の、とある日。


 ヴェスタ帝国の表情が、一変していた。そこにあったのは、炎に巻かれる家屋、積み重なる瓦礫。そして、ふさぎ込む人々だった。


「何故(なぜ)だ!議会の評決は、未だ下りていないだろう。」
 ザイーテンが叫ぶ。後方には三人の部下が並んでいる。

「ヴェスタの民と、駐留している“リザード連合国”との間で小競り合いがありまして、リザードの兵士が、町を火に掛けたのです。」
 部下の一人が言った。
「リザード連合国が?奴らの駐屯所まで行くぞ。」




「これは、ザイーテン将軍。いかがいたしましたかな?」
 リザード連合国の駐屯所では、兵士達が酒盛りをしていた。

「…どう言う事だ。何故、罪も無い人々を傷付ける!」
 ザイーテンは、リザードの将軍“バシリス”を睨む。

「はっ!罪も無い?奴らが、私達の復興作業を邪魔したんだよ。何の逆恨みか知らんが、私達は被害者なんだよ。」
 バシリスは堂々と言いのけた。

「だからと言って、火を点ける事はないだろう!」
 ザイーテンが、机を叩いた。

「熱くなるなよ。惨敗の民に情けは要らん、ゴミ同然だ。…違うか?」
 バシリスは顔をザイーテンに近付け、いやらしく笑う。

「ふざけるな。ゴミだと?このトカゲ野郎!いくらマジェスタの常任国でも節度はわきまえろ。」
 ザイーテンが怒りを顕(あらわ)にする。

「おやおや、怒らないで下さいよ。」
 バシリスがニャけて言った。

「…とにかく、騒ぎはやめてもらおう。我々は侵略者じゃない。ヴェスタの復興の協力者にすぎんのだから。」
 ザイーテンは、感情を押し殺しながら言う。

 そして駐屯所を後にした。
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