???
 そこにいたのは、ツルツルに輝く頭の貴ボンだった。貴ボンは慌てて布団を被り直す。



「ぎゃーはははははははははははは…」


 突然闇夜をも切り裂く笑い声が響いた。

 後方を振り返るヨッタ。

 笑い声の主は、京子だった。京子は大口を開け、貴ボンを指差しながら笑い続ける。

「ヨッタ頼む、京子を外に出してくれ。あいつは、“ハゲを見ると笑いだす病”なんだよ。」
 布団から顔だけ出して貴ボンが懇願(こんがん)する。

「…わ、訳は分かんねーけど…分かった。行こう、京子。」
 ヨッタは京子の肩を抱きしめ、数メートル先の公園へと連れ去った。




「大丈夫か京子?」
 ヨッタはベンチに座る京子の顔を見つめる。

「うん。後免ね、もう大丈夫だから、貴ボンの所に行って、私ここで待ってるから。」
 京子は落ち着きを取り戻しつつあった。

「待っててくれよ。くっきー京子を頼んだぞ。」
「ワン」

 ヨッタは京子をくっきーに託し(たくし)貴ボンの元へ急いだ。




「京子は大丈夫か?」
 布団から顔を出し貴ボンが訊ねてくる。心なしか震えているようだ。

「落ち着いている。それよか、貴ボン…お前カツラだったんか。」

「ち…違う、これは…」
 右手で頭を押さえ答える貴ボン。


『…あれ、こいつ、どこかで…』ポゴがヨッタのシャツの襟首から、目だけ出していた。


「お前の言ってたあざらし、俺も見たよ。」
 ヨッタはジーンズの後ろポケットから、貴ボンの財布を出した。

「そ…それは、俺の!確か“あいつ”が盗んでいって…」

「何だよ、中のコンドーさん」
 ヨッタは訝しげ(いぶかしげ)に貴ボンを睨む。

「これは…あれだよ、あわよくば、京子を…それよか、どこでこれを、“あいつ”は?」
 しどろもどろに貴ボンが言い訳する。

「あの、あざらしは、くっきーがやつけたよ。」

「くっきー?ああ、“羅愚那勒(らぐなろく)”の事か。」

「違う!くっきー!」

『なんて名前付けんだよ。』慌てて返すヨッタそしてさらに聞いた。


「一体何があったのさ。」

「聞いてくれるか、ヨッタ。実はさ…」
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