???
 ヨッタ達がザーラ星人と出会った、三十分程前の事だった。


 貴ボンはアパートへと戻りあざらしと戯れ(たわむれ)ていた。


「しっかし珍しい模様してんな。」
 貴ボンはうんこ座りで、あざらしを見つめる。
「キュー」

「へへへ、待ってろよ、テレビ局に情報リークする前に、京子に会わせてやっからよ。あわよくば京子も、俺の物だしよ。」
 にやけて顔が崩れた。

「おっと、餌やらねーとな。お前何食うんだ?」

 言って台所に立つ。増えるワカメを手にした。
「ワカメでいいよな。」

 ご機嫌な貴ボンだった。

 その時、不意に後方に殺気を感じ振り返った。

 あざらしが立っている!その小さな瞳が不気味に輝く。

「な…?」
 意表を付かれた貴ボン。さらに、あざらしの口が、縦に180゜開いた。

 バクン!

 間髪入れず、貴ボンの頭があざらしに飲み込まれた!

「…」
 息が出来ず、藻掻く(もがく)。食らい付くあざらしの顔を握り、力一杯引きはがした。

「うおーっ!」
 そしてはがしたあざらしを思い切り、壁に向かって投げ付けた。

「な、何で?」
 呆然自失となり、佇む(たたずむ)貴ボン。

 ハッと我に返り、自分の頭を触った。

「え?」
 そこに在るべき物が無い。貴ボン自慢の、あのスーパリーゼントがそっくり、消えていた。

「うわぁー俺のスーパリーゼントが、食われたー!」

 刹那(せつな)!あざらしが、貴ボン目がけ右フックを繰り出す。貴ボンは反射的に左腕でそれを払い、カウンター気味の右ストレートを穿つ(うがつ)。

 しかしあざらしは体を回転させそれを避け、と同時に、左のバックブローを貴ボンの左頬に叩き込んだ。

「が…」
 貴ボンは意識を失い、倒れこんだ。

 その後の事は覚えてないらしい。気が付くと、あざらしの姿はなく、財布が無くなっていたそうだ。
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