???
 ヨッタの肩と背中から、ジクジクと血が滴る。気が遠退きそうな感覚を覚える。

「ハァハァ、強え!あんな攻撃どうやって避けるんだよ。」

「ヨッタ、相手をナメ過ぎだよ。冷静になって。気を溜めるんだ。」
 ポゴがアドバイスする。

「冷静にね。わ…分かった、やって見る。」
 言って、ヨッタはフーッと息を吐き、胸の前で掌を合わせ力を籠めた。

「あいちゅ、何ちてるでちゅか?…まあ、良いでちゅ。たたき込むでちゅティプリ!」
 キャミーは足をバタバタさせて叫ぶ。足元に寝込がるトランクを蹴ながら。

 ティプリが青龍刀を手前に構えて突っ込んで来た。

 だがヨッタは微動だにしない!

「キュー」
 ティプリがヨッタの首筋目がけて、青龍刀を“いっかん”させる。間髪、ヨッタはサッと身を躱し(かわし)た。

 ティプリは怯まず、更に青龍刀を振り回し続ける。だがヨッタには擦りもしない!

「どう言う事でちゅ?あのラッシュを軽く避きぇるなんちぇ!」
 戸惑うキャミー。



「たゆたう風に何人(なんぴと)たりとも拳を穿(うが)つ事は出来ない。何故なら風は、世界を巡る旅人なのだから。そしてその掟を破った者に、風は容赦(ようしゃ)無い鉄槌(てっつい)を下す!」
 ポゴが呟く。

 突然空気の流れが変わった!周りの空気が、ヨッタの元に集まり始める!

「キュ?」
 ティプリの体もヨッタの方に引き込まれる。

 そして、ヨッタの右手から陽炎(ようえん)があがった。それは、まるで青き龍の如く荒れ狂う!


「風龍牙!」
 ポゴが声をあらげた。

 ベコッー!!

 右拳(青龍)が、ティプリのテンプル(こめかみ)に食らい付く!

「…」
 ティプリは泡を吹いて崩れ落ちた。
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