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 ガシャーン、ガシャーン! 

 “金属”の響くような足音と共に、鈍平が現われた。

 鈍平はマスクを付けている。

 ガシャーン!

 不意に鈍平が立ちくらみを起こし倒れた!

「大丈夫すか、鈍平さん。」
 ヨッタを始めとする従業員達が慌てて近寄った。

 鈍平は金属の棚に、腕を強か(したたか)に打ち付けた。金属の棚がグニャっと歪ん(ゆがん)でいた。

「だ…大丈夫。この体に…いや、風邪が少し残っててな、ヒー。」
 言って鈍平は何事も無かったように立ち上がる。

「さあ皆、元に戻って、ヒー。」

 鈍平の言葉に皆、安心し元に戻る。



「鈍平係長。風邪はまだ治って無いんすか?口笛の切れ悪いし。」
 従業員の一人が訊ねる。

「そうだよ、鈍平ちゃん。今の歩った時の“金属音”にしても何よ、靴に“鉄クズ”でも挟まってんじゃないの?」
 別の年配の従業員も訝しげに訊ねた。

 確かに今日の鈍平はおかしかった。皆、鈍平の第一声に聞き耳をたてる。

「君たちには心配を掛けた、面目ない。まだ少し風邪気味だが、何とか大丈夫だ。それと今の足音は“安全靴”を変えたからだろう、気にせんでくれ、ヒー。」
 鈍平が言った。

「なんだよ、心配かけんなよ。鈍平さん。」
 千秋がフッと息を吐いた。
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