？？？

「いいか、紫織。俺がこれからあっちに戻って、ヨッタの飲み物にこの眠り薬を入れる。するとヨッタは寝ちまう、そこをお前がタクシーで『私、ヨッタ先輩を連れて帰りますわ』って言って、ヨッタをお前のマンションに連れ帰る訳だ。俺の方は、『京子さん。あいつ等帰ったから、僕達は、二人で朝靄（もや）に響く船の汽笛を一緒に聞きましょう』となる訳だ。」
　長々とした台詞を言い切る貴ボン。口元からよだれが滴る。

「でも、貴ボン先輩…」

「そう言う事で、作戦開始だ！」
　貴ボンはスキップで去って行った。




「遅かったじゃねぇか、貴ボン。」
　ヨッタが席に戻る貴ボンを見上げ言った。紫織も後から続いて現われた。

「悪い、ちょっとな。あ！ヨッタ、あそこに仮面ラ〇ダー！」
　貴ボンは言って、窓の外を指差した。

「どこ、どこ！」
　あろう事か、ヨッタがその方向を見る。

　ﾎﾟﾁｬ。貴ボンがヨッタのアイスコーヒーに、眠り薬を仕込んだ。

「何だよ、何もいないだろ。」
　ヨッタが不機嫌そうに言った。

「わ…悪い、殿様バッタだったみてぇだな。」
　貴ボンはヨッタに謝った。そして後方を振り返り、紫織に合図を送った。