???
「ヨッタ!貴ボン知らない?」
 くっきーに肉をあげるヨッタの元に、京子が慌てて近づいて来た。

「はあ、貴ボン?知らないな。どうしたのよ。」
 ヨッタが答えた。

「ビンゴ大会の賞品、貴ボンに預けてあるのに貴ボン、『持ってくる』って言って、帰ってこないのよ。」
 京子が必死に訴える。

「昨日買ってきた、バックや時計の事か?」

「そうなのよ。」

「分かった。俺も探してやる。」

「ありがとう。ヨッタ。」

「いこう、くっきー。」
 ヨッタは、くっきーと共に駆け出して行った。


「どうしたのです?貴ボン先輩。」
 紫織が言った。貴ボンは物陰に隠れている。

「き…京子に追われてるんだ。」
 貴ボンはキョロキョロと辺りを見回した。

「何故(なにゆえ)、京子お姉さまに追われているんです?」
 紫織が訊ねる。

「昨日買ってきた賞品、中身だけ無いんだよ!ケンメリ、鍵掛けてなかったから、車上ドロにあったのかも。」
 貴ボンが悔しそうに前を見据える。

「そんな事が…いかがいたしますの?貴ボン先輩。」
 紫織は両手で自分の口を押さえ、我が事のように驚いた。

「取り敢えず、アパートに帰って、代わりの賞品見繕ってくるわ。その間、我が妹分の紫織よ、お前に任せるぞ。」
 貴ボンが紫織の肩をトンと叩いた。

「…分かりましたわ。後の事は、この紫織にお任せあれ。」

「頼んだぞ。」
 固い団結の元、貴ボンはアパートに戻る為、駐車場に駆けて行った。

「あ!紫織ちゃん。昨日は、ありがとね。俺の事、家まで送ってくれて。」
 紫織の元にヨッタが歩み寄った。

「よ…ヨッタ先輩!そんな事、宜しい(よろしい)んです。」
 真っ赤に紅潮する紫織。

「それはそうと、紫織ちゃん。貴ボン知らない?」

「さ…さあ、アパートに帰った訳じゃ、無いでしょうし。」
 紫織は、しどろもどろで答える。

「そうだよね。もうちょっと探してみるよ。」
 ヨッタが、優しく笑い掛けた。
< 80 / 218 >

この作品をシェア

pagetop