ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~



ワンはそんなことしない。



「そこで偶然会ったから」



偶然会ったから、一緒に帰る。



だけどそれじゃまるで、恋人だ。



あたしには、「待ってる」の一言もなかったくせに。



「じゃあ早く行きなよ。あの子待ってるよ」



そう言って背を向けるあたしの手首を、ワンが掴んだ。



「稀衣ちゃんっ」

「………」

「なんか怒ってる?」

「…怒ってないよ」

「また嘘だ」



………。



変なとこばっかり鋭い。



「じゃあ…なんて言えばいいの?」



嘘つかないで、あたしはなんて言えば正解なの?



「怪我してる子なんてほって、あたしと帰ってって言えばよかった?」



掴まれた手首が、ジンジンと痛かった。



「必死に、仕方ないって片付けようとしてんじゃん」



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