ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~
佐倉に好きな人が出来ていたなんて、初耳だ。
「やっぱり今までのあれは、冗談だったんだ?」
「や、そんな訳ないじゃん!」
珍しく焦ってる佐倉が面白くて、意地悪を言ってしまった。
「…ぷ。冗談だよ。良かったね、応援するよ」
「えぇ?!あ…あぁ」
「純ちゃんが稀衣ちゃんにちょっかい出さなくなるなら、オレも応援する」
「はっ、お前らの応援なんてなくても、余裕で射止めてやるっつーの!」
佐倉はいつもの調子でそう言うと、照れ隠しなのか早々に体育館を出ていった。
辺りはすっかり人がいなくなってしまった。
みんなは表彰式で、グランドに集まってるみたいだ。
「あたし達も行こっか?」
「…稀衣ちゃん」
ワンは立ち上がりもせず、動き出す素振りひとつみせない。
「ワン…?」
「ゴメン」
「え?」
「オレ、勝てなかったから」
うつむいたワンは、しょぼくれた顔でそう言った。