ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~
あれから一度も、店に来たのを見たこともない。
「……さい」
まぁ、覚えているのは俺だけなんだろうが。
あの時に比べると、今は表情が固くなったよな。
というか、笑わない。
再会してから、笑ったとこを見たことがない。
「……なさい」
……あ?
誰かが呼ぶ声が聞こえた。
「…さくら」
そう聞こえた気がしたんだよ。
俺を“佐倉”と呼ぶもんだから、
「……あゆ…」
鮎沢…?
だと思った。
徐々にハッキリとし出した視界に、俺をのぞき込むと人影が映る。
そこで俺は、ようやく自分の間違いに気付いた。
「…起きなさい。もう昼休みよ」
「…あ」
俺はいつの間にか爆睡していたみたいだ。