ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~
俺をのぞき込むのは、相変わらずの仏頂面。
似ていない。
決して似てはいない。
美人ってとこだけだろ?
顔だって似ていないし、細身で背丈は似てるけどさ。
鮎沢の方が、いくらか柔らかい印象が最近はある。
「早く行かないと、時間なくなるわよ」
確かに、もうみんな揃ってるだろな。
「先生はどこで食べてんの?」
「え」
「誰と食べてんだよ?」
「…別に、誰とどこで食べていようが、あなたには関係のないことよ」
「ふーん、ひとりね」
「………」
なにか言い返したそうな顔を、一瞬垣間見せたが、すぐにいつもの無表情に戻すと、
「…なんでもいいわ」
と、ため息をついた。
「そうやって感情潰すのって、なんの為?」
俺はそう見える。
本当の自分の感情を、隠してるんじゃないのかと。
一瞬、薬品を触る先生の手の動きが止まった。
「…なにが言いたいのよ」
「人と関わるのをあからさまに避けるのは、なんで?」
「………」
「………」
「…それを聞いて、どうするの。あなたが知る必要はないわ」
「…ま、いいけど」
「………」
「いつかその口から、なにもかも吐かせてやりたい」
「?!」
珍しく少しだけ表情を崩した彼女を確認して、俺は保健室を出た。