僕等は、それを恋と呼んだ。



ねぇ、何で?


だって、利揮は今、あたしの彼氏だよね?


じゃあ、何で今、利揮はここにいないの…?



やっぱり、梨音ちゃんなの?



ねぇ、利揮。



「……っ」



涙が止まらなくて。

立てなくて。

動けなくて。




「…詩乃佳?」


でも、呼ばれた名前に顔をあげた。




あたしの名前を呼んだのが、


利揮だと、思った。



利揮だと、いいなと思った。

利揮だと、願った。




「………先輩?」

「どうした…?」


ゆらゆらとした視界の中、先輩だという事が分かった。



……利揮じゃない。


利揮じゃ、なかった。



利揮は…………



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