僕等は、それを恋と呼んだ。



「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


久しぶりに外へ出かけていくあたしを見て、お母さんは微笑んだ。


何も聞いてこない、お母さん。


それがお母さんの優しさ。



「よっ」


家の前へ行くと、マフラーをつけた先輩がいた。

「行くか」

「うん」



手は、もちろん繋がない。

だって恋人同士じゃない。



カランコロン。


2時間くらい並んで、やっとあたし達の番がきた。


小銭を入れて、あたしは目を閉じる。


……幸せな恋が、したい。


あたしはそう願った。



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