僕等は、それを恋と呼んだ。
―――あの日。
クリスマスの日。
梨音から電話が来た。
“お母さん倒れた…っ。勇希も泣いててっ…どうしよう、あたし…っ”
梨音は母子家庭で。
弟の勇希(ゆうき)は、まだ小学生4年。
“お母さんまでいなくなったら…っ、あたし…”
梨音は滅多に弱音をはかない。
泣かない。
だから、梨音の家の事情も知ってる俺は心配になって――
“今から行く―――”
梨音のとこへ行った。
俺は、梨音のとこに。
…詩乃佳が、
いたのに。
けど、俺は梨音も梨音の弟もお世話になった梨音の母親も、
ほっとけなかった。