僕等は、それを恋と呼んだ。
「ごめん、俺もトイレに行く」
スッと立ち上がる笈原。
――詩乃佳に会いにいくんだ。
「笈原」
気付いたら部屋のドアの近くにいた笈原に近づいて、呼び止めていた。
ゆっくりと笈原は振り向いて、あたしを見る。
「……笈原、あんたは誰が好きなの?」
小さな声であたしは言った。
「…俺、未練がましいから」
少し切なく笑ってそう言うと、笈原は出ていった。
――やっぱり。
笈原はまだ詩乃佳が好きなんだ。
詩乃佳と笈原のこと、
詩乃佳からしか話を聞いてないから、よく分からないけど、
本当はどうなんだろう。