僕等は、それを恋と呼んだ。
「あ、矢田さんじゃん」
トイレから出た途端、知らない誰かに声をかけられる。
うちの学年で“矢田”はあたしだけだし、
トイレから出てきたのはあたしだし、
つまり、完璧あたしが呼ばれたよね、うん。
「えと…矢田ですけど…?」
目の前にはニコニコした若干ギャルっぽい女の子が二人。
あんれ?
あたしこの子と話したことあるっけ…?
あたし、人の顔とか名前覚えるの苦手だからなぁ。
覚えてないだけ?
「ねぇねぇ、矢田さん!
笈原と付き合ってるって、まじ!?」
そんな事を一人で考えてると、やけに化粧の濃い子にそんな事を言われる。
「…へ」