僕等は、それを恋と呼んだ。




「……。えっと、その……誰が?」

「はぁ?

あー。もう、お前さっきから何だよっもう!
俺がっ、お前を好きなんだよっ!」



何故か逆ギレ気味の笈原は、

“俺”と言って自分を指して、“お前”と言ってあたしを指した。



…こらこら。


人に指を指しちゃいけないって、お母さんに言われたでしょ。



…って、今はそんな事じゃなくて!



「はい?
今日エイプリルフールじゃないから!
ずっと彼氏がいないあたしをバカにしてるの!?」



わざと笑ってそう言った。



こんな冗談、笑えない。





だってだって…


笈原が、あたしを好き…?



ありえないよ、だって。



あたしは、ずっと辛い思いして。
何度も泣いて。



でも、梨音ちゃんの横にいる笈原をずっと見ていたんだ。


梨音ちゃんに笑いかける笈原を見ていたんだ。



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