僕等は、それを恋と呼んだ。
いつもより倍の時間をかけて、丁寧にメイクしたし。
髪もちゃんとアイロンして整えたし。
服だって、新しいのを買っちゃったり。
「矢田、何観たい?」
笈原の目線の先には、今上映されている映画の看板。
映画を観よう、とは決めていたけど、
何を観るのかは、その場で決めようってなったんだ。
あたしも笈原と同じように看板を見る。
「うーん」
とりあえず…ホラーは嫌かな。
いや、別にホラー映画が苦手ってわけじゃないけど。
初デートにホラー映画って…、なんか…ねぇ?
さすがにね?
「笈原って、どんなのいつも観んのー?」
「俺、何でも観るんだよなー。お前は?」
「あたしも何でも観るよ」