僕等は、それを恋と呼んだ。




少し照れたように言う笈原が目の前にいる。




「あたしは……」



ずっと、笈原が好きだった。

大好きだった。




その瞳に何度も写りたいと思ってた。


その手を繋ぎたいと思ってた。


その笑顔を独り占めしたいと思ってた。










これは、辛い片思いしていたあたしへのご褒美なのかな。










「……あたしも、笈原が好き…」



それは、秋の風がふき始めた時のこと。



矢田 詩乃佳(やだ しのか)
高校2年生の秋。



笈原 利揮(おいはら りき)への、長い片思いは終わりをつげた。



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