アリスズc
∞
桃は、困っていた。
領主宅に滞在している間に、彼女は次の旅路の準備をしなければらない。
外への保存食の買い出しも、そのひとつだ。
長期間、野営をしていたため、保存食はほぼ底をついている。
だが。
「桃ー」
コーが、くっついて離れない。
彼女を一人置いて行くというのは、非常に不安だった。
コーは、まだ日常生活の常識というものを、何も知らないのだから。
かと言って、狙われている彼女を連れて町へ行くのは、もっと不安で。
「リリューにいさんー」
べったりくっつかれたまま、桃は従兄の知恵を借りるために、彼の部屋を訪ねたのだ。
「…文官殿に話してみたらどうだ?」
しかし、リリューの答えは意外なものだった。
桃は、眉間を寄せた。
ホックス本人は、別に嫌いではない。
だが、コーに対する意見は、明らかに食い違っているのだ。
そんな彼に、彼女の相談をするのは、桃には受け入れがたいものだった。
「一生、モモが面倒を見るわけにもいかないだろう?」
あっさりと、痛いことを言われる。
桃は、自分にくっつくコーを見た。
その様は、とても可愛らしいが、彼女は野の動物ではなく人間なのだ。
成長しなければならないし、自分で生きられるようにならなければならない。
「これからずっと、彼女は狙われるだろう。トーのように、自分の力をきちんと使えれば生きていける」
リリューは、旅の成功のためにコーを利用しようとは思っていない。
そんなこと、桃は疑う余地もなく分かっている。
トーに出会うまで、何とか無事に。
無事にコー自身を生き延びさせるために、それは必要ではないかと言うのだ。
「…わ、分かった」
不承不承、桃は話を飲み込む。
「コー…ホックスタンディーセム様のところに行こうか」
ゆっくりと語りかけると、コーはにこぉっと笑った。
「ホックスタンディーセムのとこ! 行こう!」
コーに引っ張られながら、桃は小さくため息をついた。
桃は、困っていた。
領主宅に滞在している間に、彼女は次の旅路の準備をしなければらない。
外への保存食の買い出しも、そのひとつだ。
長期間、野営をしていたため、保存食はほぼ底をついている。
だが。
「桃ー」
コーが、くっついて離れない。
彼女を一人置いて行くというのは、非常に不安だった。
コーは、まだ日常生活の常識というものを、何も知らないのだから。
かと言って、狙われている彼女を連れて町へ行くのは、もっと不安で。
「リリューにいさんー」
べったりくっつかれたまま、桃は従兄の知恵を借りるために、彼の部屋を訪ねたのだ。
「…文官殿に話してみたらどうだ?」
しかし、リリューの答えは意外なものだった。
桃は、眉間を寄せた。
ホックス本人は、別に嫌いではない。
だが、コーに対する意見は、明らかに食い違っているのだ。
そんな彼に、彼女の相談をするのは、桃には受け入れがたいものだった。
「一生、モモが面倒を見るわけにもいかないだろう?」
あっさりと、痛いことを言われる。
桃は、自分にくっつくコーを見た。
その様は、とても可愛らしいが、彼女は野の動物ではなく人間なのだ。
成長しなければならないし、自分で生きられるようにならなければならない。
「これからずっと、彼女は狙われるだろう。トーのように、自分の力をきちんと使えれば生きていける」
リリューは、旅の成功のためにコーを利用しようとは思っていない。
そんなこと、桃は疑う余地もなく分かっている。
トーに出会うまで、何とか無事に。
無事にコー自身を生き延びさせるために、それは必要ではないかと言うのだ。
「…わ、分かった」
不承不承、桃は話を飲み込む。
「コー…ホックスタンディーセム様のところに行こうか」
ゆっくりと語りかけると、コーはにこぉっと笑った。
「ホックスタンディーセムのとこ! 行こう!」
コーに引っ張られながら、桃は小さくため息をついた。