アリスズc

「私を監視しているのか?」

 ホックスの言葉に、リリューは首を横に振った。

「見せていただいているだけです…お邪魔でしたら出て行きますが」

 目の前にいるのは、ホックスとコー。

 白い髪の少女を連れて、モモがホックスのところを訪ねた。

 それに、リリューも同席したのだ。

 この文官殿が、どのようなことをするのか興味があったのと、モモの不安を少し取り除くため。

 彼女は、買い出しに行かねばならず。

 コーを置いていくことを、とても心配していた。

 モモのすがる目が、リリューに向く。

 軽く頷いて、彼は従妹を町に出した。

 そして、残ったのがこの三人というわけだ。

「構わないけど…とばっちりを食うかもしれないよ」

 目の前にちょこんと座るコーの前に、ホックスは近づいて行く。

「『あー』と言ってみて」

 ホックスは、単刀直入に彼女に要求する。

「……?」

 コーは、首を傾げた。

「『あー』だよ、『あー』」

 自分の口を大きく開け、彼女を促す。

「………」

 コーは、首を傾げながら表情を曇らせた。

「桃は?」

 キョロキョロしながら、彼女を探し始める。

「…買い物だよ」

 ため息をつくホックスは、出来の悪い生徒を前にする先生のようだった。

「買い物?」

 言葉を、時々コーは噛みしめるように発音する。

「物とお金を取引することだ」

 ホックスの言葉は──難しすぎるな。

 リリューは、苦笑を飲み込んだ。

 コーは、首を右に左に傾けている。

「………」

 ホックスは、眉間のしわを深く深く刻んだ。

 彼女と上手にコミュニケーションを取るには、まだたくさんの時間が必要なようだった。
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