アリスズc

 晩餐の席。

 ハレは、ホックスを伴って席についた。

 ホックスは、貴族的仕事が好きではないようで、とても窮屈そうだったが。

 夫人側の席に、若い男が二人いる。

 一人は、モモに手痛く断られたというクージェ。

 もう一人は。

 夫人との話の中で出てきた、エインという男。

 この北の領主の息子だった。

 何故、モモとの関係を示唆したのか、その光でうっすらと分かった。

 彼女の持つ光と、似た色をしているのだ。

 近すぎず、しかし遠すぎず。

 モモの父親は、明らかにされてはいない。

 なるほど。

 領主の娘だったのか。

 それで、夫人が自分の息子と添わせようと考えたことも、きっちり納得がいった。

 いくら夫人がウメを愛していたとしても、貴族ではない娘を妻に、ということは難しい。

 しかし、領主の娘であれば──それがたとえ婚外子であったとしても、周囲への言い訳は出来ると考えたのだろう。

 ふと。

 ハレの中に、微妙な違和感が浮かんだ。

 それが何であるかを考えるより前に、新たなる客人が通された。

 刹那。

 その空間にいる人間たちすべてが、目を奪われた。

 美しく飾った、女性が二人入ってきたからだ。

「本日は、晩餐にお招き下さいまして、本当にありがとうございます」

 モモだった。

 優雅な礼の彼女を見て、隣の白い髪の娘が慌てて真似る。

 普段、あどけない子供のようなコーも、こうして見ると本当にモモと余り年が変わらないのだと分かる。

 珍しいものに目を輝かせる、その色は決して隠すことは出来ないようだが。

 普段の二人を知っているホックスが、目をそらしてはもう一度見たりと、不思議な挙動を繰り返している。

 クージェとエインの二人は──目もそらせないまま、ただただ女性たちを見ているのだった。
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