アリスズc
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リリューは、夜の庭を歩いていた。
どこからともなく、竪琴の音とコーの歌声が聞こえてくる。
従妹は、うまく夫人との対面を果たしているようだ。
こういう内向きの仕事となると、リリューは途端に役立たずになる。
だが、気楽でよかった。
おかげで、久しぶりにこうして一人で好きに歩くことが出来るのだ。
まだ、定兼に会ったことをリリューは忘れられずにいた。
いま、自分の左の腰におさまっているその刀が、本当にようやく自分を認めてくれた気がしたのだ。
その感触を、彼はゆっくりといま味わっていた。
ふと、人の気配に足を止める。
こんな夜に、裏庭の石段に誰か座っているのだ。
珍しいな。
夜を嫌い、建物の外に出たがらない人も多いというのに。
「やめる、やめない、やめる、やめない」
小さい女の声が、ぶつぶつと奇妙な言葉を繰り返す。
「やめる、やめない、ああもう…やめたぁい!」
その言葉が、どんどん怒りを帯びていき──ついには、両手両足を放り出す。
余りに勢いよく放り出したので、その身体が後ろに傾ぐ。
「あ、わわ!」
反射的に、リリューは動いてしまった。
ぐらぐら揺れながら、後ろに倒れようとする女性の身体を止めたのだ。
「び、びっくりした」
条件反射にリリューにしがみつきながら、女性はどきどきした声を止められないようだった。
「大丈夫か?」
取り合えず落ち着かせようと、彼が言葉をかけると。
「って…え? え? えー!?」
逆効果だった。
今頃にして、ようやく自分がしがみついているのが、人間であることに気づいたように、彼女は驚いて飛びのこうとするのだ。
ゴン!!!
結局。
彼女の後頭部は、後ろにあった戸に思い切りぶつけられることになった。
リリューの助けは、残念ながら役に立たなかったのだ。
リリューは、夜の庭を歩いていた。
どこからともなく、竪琴の音とコーの歌声が聞こえてくる。
従妹は、うまく夫人との対面を果たしているようだ。
こういう内向きの仕事となると、リリューは途端に役立たずになる。
だが、気楽でよかった。
おかげで、久しぶりにこうして一人で好きに歩くことが出来るのだ。
まだ、定兼に会ったことをリリューは忘れられずにいた。
いま、自分の左の腰におさまっているその刀が、本当にようやく自分を認めてくれた気がしたのだ。
その感触を、彼はゆっくりといま味わっていた。
ふと、人の気配に足を止める。
こんな夜に、裏庭の石段に誰か座っているのだ。
珍しいな。
夜を嫌い、建物の外に出たがらない人も多いというのに。
「やめる、やめない、やめる、やめない」
小さい女の声が、ぶつぶつと奇妙な言葉を繰り返す。
「やめる、やめない、ああもう…やめたぁい!」
その言葉が、どんどん怒りを帯びていき──ついには、両手両足を放り出す。
余りに勢いよく放り出したので、その身体が後ろに傾ぐ。
「あ、わわ!」
反射的に、リリューは動いてしまった。
ぐらぐら揺れながら、後ろに倒れようとする女性の身体を止めたのだ。
「び、びっくりした」
条件反射にリリューにしがみつきながら、女性はどきどきした声を止められないようだった。
「大丈夫か?」
取り合えず落ち着かせようと、彼が言葉をかけると。
「って…え? え? えー!?」
逆効果だった。
今頃にして、ようやく自分がしがみついているのが、人間であることに気づいたように、彼女は驚いて飛びのこうとするのだ。
ゴン!!!
結局。
彼女の後頭部は、後ろにあった戸に思い切りぶつけられることになった。
リリューの助けは、残念ながら役に立たなかったのだ。