アリスズc

 ハレの旅は順調だ。

 コーが、歩きながらいろんな歌を歌うようになった。

 それらが、多くの疲労を取り除いてくれるのだ。

 本人は、そうと自覚していないのかもしれないが。

 そして彼らは──森の中に入った。

 ここも、れっきとした街道なのだ。

 太陽の光とは違う植物の光がよく分かる薄暗さの中、ハレたちは歩みを進めていく。

 そんなハレの目に。

 何か映った。

 街道から離れた木々の奥に、ひときわ光るものがあったのだ。

 人の光ではない。

 それは、あくまでも植物の光。

 だが、他の植物ととりわけ違う輝きだ。

 ハレは、足を止めた。

「どうかしましたか?」

 リリューも足を止め、彼の見ている方に視線をやる。

「ああ、良い木があるようだ」

 不審なことではないのだと、まずは伝えた。

 どれのことかと、皆がハレと同じ方向を見るのだが、分からないようだ。

 見た目では、そう差はないのかもしれない。

「───」

 コーが、楽しそうに声を飛ばした。

 本当に、矢のように音が飛んでいくのだと感心していると。

「すごく元気な木があるよっ」

 がさがさ。

 誰も口を挟む暇もなく、コーが飛び出してゆく。

「コー!」

 慌てて、モモがそれを追う。

 白い髪の娘は、何ら迷うことなくその光の木にたどりつくのだ。

 一見、他の木と大差ないように見えるそれ。

「どうしますか?」

 リリューの言葉は、愚問だった。

「一休み、としようか」

 既に──木の周りでコーが歌い出しているのだから。
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