アリスズc
∞
コーは、頑張った。
だが、頑張ってはならないこともあるのだと、桃は痛感したのだ。
ハレが言ったではないか。
彼らは、魔法を使うと年を取る、と。
トーの年齢が、全然変わらないのは、魔法を使っていないから。
ただの歌は、魔法とは違う扱いなのだろう。
だが、相手を滅ぼす聞こえない歌は、身体に大きな負担がかかり、一気に年齢を加速させたのだ。
だからこそ、あの男もその歌を選択することを、これまでためらっていたのだろう。
「おはよう…ハレイルーシュリクス」
コーが目を覚ました時、彼女は一番最初にハレを見ることになる。
何故ならば、彼が自らの膝を貸していたのだから。
どうして、ハレが10歳の姿をしているのか、本当に不思議な光景だった。
「おはよう、コー」
優しく、慈しむように彼女の髪を撫で、穏やかな瞳を向ける。
ああ。
桃は、やっと分かった。
いままでも、頭のどこかでは分かっていたのだ。
だが、それは余りに突拍子もないことのように思えて、ずっと遠くに追いやっていただけ。
「ハレイルーシュリクス…また大きくなった?」
大きくなったのは自分だというのに、コーはとぼけたことを言いながら笑う。
だが、ハレの膝が心地よいのか、そこから頭を上げようとはしなかった。
「もうすぐ…本当に大きくなるよ」
その日を、彼もまた心待ちにしているようだ。
柔らかい言葉の裏に、強い望みが潜んでいる。
笑いあう二人。
そこに、桃が分かったものがあった。
恋を、しているのだ。
太陽の子と、月の娘が。
お互いを思いあっている。
そっか。
桃も、照れて笑ってしまう。
少しだけ、寂しかった。
娘に好きな人が出来た時の親は──きっとこんな気分。
コーは、頑張った。
だが、頑張ってはならないこともあるのだと、桃は痛感したのだ。
ハレが言ったではないか。
彼らは、魔法を使うと年を取る、と。
トーの年齢が、全然変わらないのは、魔法を使っていないから。
ただの歌は、魔法とは違う扱いなのだろう。
だが、相手を滅ぼす聞こえない歌は、身体に大きな負担がかかり、一気に年齢を加速させたのだ。
だからこそ、あの男もその歌を選択することを、これまでためらっていたのだろう。
「おはよう…ハレイルーシュリクス」
コーが目を覚ました時、彼女は一番最初にハレを見ることになる。
何故ならば、彼が自らの膝を貸していたのだから。
どうして、ハレが10歳の姿をしているのか、本当に不思議な光景だった。
「おはよう、コー」
優しく、慈しむように彼女の髪を撫で、穏やかな瞳を向ける。
ああ。
桃は、やっと分かった。
いままでも、頭のどこかでは分かっていたのだ。
だが、それは余りに突拍子もないことのように思えて、ずっと遠くに追いやっていただけ。
「ハレイルーシュリクス…また大きくなった?」
大きくなったのは自分だというのに、コーはとぼけたことを言いながら笑う。
だが、ハレの膝が心地よいのか、そこから頭を上げようとはしなかった。
「もうすぐ…本当に大きくなるよ」
その日を、彼もまた心待ちにしているようだ。
柔らかい言葉の裏に、強い望みが潜んでいる。
笑いあう二人。
そこに、桃が分かったものがあった。
恋を、しているのだ。
太陽の子と、月の娘が。
お互いを思いあっている。
そっか。
桃も、照れて笑ってしまう。
少しだけ、寂しかった。
娘に好きな人が出来た時の親は──きっとこんな気分。