アリスズc
成人
∠
テルが、その町に入った時。
目の前から、女が近づいてきた。
すらりとした長い手足。
弾けんばかりの胸のふくらみ。
晴れ晴れとした、そして力強い金褐色の瞳で、テルを真っすぐに見ている。
ふ、ん。
どんな姿をしていようとも、彼には分かる。
イデアメリトスの血は。
女にしては短すぎるその髪を一度見た後、テルは彼女の目を見つめた。
「何か、言ったら?」
不審者からかばおうとするビッテを、テルが横に押しやった直後、女が唇を開いた。
美しく紅を引いた唇を、だ。
「一番槍…めでたいことだな」
彼女の母に、よく似ている。
美しさも、傲慢さも。
もうしばらくすれば髪も長くなり、日向花の名を誰もがこぞって口にすることだろう。
「ふふ…太陽の息子たちを差し置いて、私が一番よ。一番最後に出立したのに」
だが、中身はまだまだ昔のオリフレアのままだった。
自分が一番才能があるのだと、言いたくてしょうがないのだろう。
「分かった分かった…だが、一人でウロつくな」
まだ、反逆者の件は解決していないのだ。
成人の儀を済ませ、魔法は解禁になったが、短い髪では強力な魔法は撃てないのだから。
「私は、一人になってなんかないわよ…いつも、あいつがついてるもの」
あいつ――姿は見えないが、あのフードの男がどこかにいるのだろう。
垣間見るだけだが、オリフレアはよい護衛を持っているようだ。
「さあ…次はあなたの番よ」
オリフレアが、道をあける。
彼女の後ろの、ずっと向こう。
高台の上から、こちらを見ている建物。
テルたちの、旅の目的地――捧櫛の神殿だった。
テルが、その町に入った時。
目の前から、女が近づいてきた。
すらりとした長い手足。
弾けんばかりの胸のふくらみ。
晴れ晴れとした、そして力強い金褐色の瞳で、テルを真っすぐに見ている。
ふ、ん。
どんな姿をしていようとも、彼には分かる。
イデアメリトスの血は。
女にしては短すぎるその髪を一度見た後、テルは彼女の目を見つめた。
「何か、言ったら?」
不審者からかばおうとするビッテを、テルが横に押しやった直後、女が唇を開いた。
美しく紅を引いた唇を、だ。
「一番槍…めでたいことだな」
彼女の母に、よく似ている。
美しさも、傲慢さも。
もうしばらくすれば髪も長くなり、日向花の名を誰もがこぞって口にすることだろう。
「ふふ…太陽の息子たちを差し置いて、私が一番よ。一番最後に出立したのに」
だが、中身はまだまだ昔のオリフレアのままだった。
自分が一番才能があるのだと、言いたくてしょうがないのだろう。
「分かった分かった…だが、一人でウロつくな」
まだ、反逆者の件は解決していないのだ。
成人の儀を済ませ、魔法は解禁になったが、短い髪では強力な魔法は撃てないのだから。
「私は、一人になってなんかないわよ…いつも、あいつがついてるもの」
あいつ――姿は見えないが、あのフードの男がどこかにいるのだろう。
垣間見るだけだが、オリフレアはよい護衛を持っているようだ。
「さあ…次はあなたの番よ」
オリフレアが、道をあける。
彼女の後ろの、ずっと向こう。
高台の上から、こちらを見ている建物。
テルたちの、旅の目的地――捧櫛の神殿だった。