アリスズc

 神殿の前に、二組の太陽の一行が集まる。

 テルは、その光景を目を細めて見つめていた。

 素晴らしいメンツだと思ったのだ。

 自分たち太陽の兄弟を除いても、剣や刀の達人に、政治家に学者、月の魔法使いまで揃っている。

 異国のちいさな国ひとつくらいならば、陥落できるかもしれない。

 そんな物騒なことを考えてみたが、残念ながらこの国は現在太陽のものだった。

 彼らが、どこかの国を簒奪する必要はないのである。

 一緒に出かけるのは、ハレのいう『やりたいこと』とやらに付き合うため。

 ヤイクに何をするのかと聞かれたが、テルは肩をそびやかす返事しか出来なかった。

 何も知らないのだから。

 だが、彼ら以外にも神官もついてくるところを見ると、何らかの神事に関わることをする気らしい。

 そして。

 一行は、庶民の建物の間を抜け──とある中庭に出たのだ。

 ああ。

 何故か。

 テルは、その光景に懐かしさを覚えた。

 自分の記憶にはない光景のはずなのに、その光を知っている気がしたのだ。

 中庭の中央には、一本の木。

「朝日の木だよ」

 ハレは、言った。

 テルが木剣を振りに道場に行っている間、兄は本を読むか、母と一緒に植物の手入れに出かけていた。

 だから、自分よりもそういう方面の知識が深い。

 朝日の木。

 母が、太陽の枝を接いだという、伝説の木。

 ハレが、荷物から一本の枝を出す。

 そうか。

 兄もまた、太陽の木を見つけていたのだ。

 母に続いて彼もまた、枝を継ごうというのである。

 母の道を──ゆくのか?

 たくさんの民と神官たちが見守る中。

 ハレが、枝を自分に差し出した。

「力を分けてくれないか?」

 弟を立てる気配りも、忘れないということか。
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