アリスズc

 太陽の木の枝は、既に枯れているように思えた。

 少なくとも、桃の目にはそう見えたのだ。

 しかし、木はとても強いのだと、思い知らされる。

 テルとハレが、それぞれの短い髪に金色の火を灯すと──枝は、みるみる間に光り輝くような色をたたえたのだ。

 小さな葉さえも、芽吹かせるほど。

「わぁ」

 素直な声をあげたのは、コー。

 兄弟の起こす魔法に、目をキラキラさせている。

 その鮮やかな枝を持ち、ハレは梯子を上るのだ。

 小刀と紐を手に。

 枝を接ぐのだと、聞いた。

 朝日の木に、太陽の木の枝を接ぎ、ひとつにするのだと。

 かつて、太陽妃もやったという儀式を、彼女の息子でもあるハレが行っているのだ。

 シンと、静まり返った空気を。

「───」

 コーが歌で破った。

 高らかで明るい、生命の歌。

 ああ、なんて幸せな枝だろう。

 桃は思った。

 太陽の息子の二人の魔法と、月の娘の歌を浴びるのだ。

 これほどの幸運は、太陽妃の時代でさえなかっただろう。

 四角で囲まれた中庭の空間が、命の光で溢れる。

 接いだ枝が、すぐさま伸びるような錯覚を覚えるほど。

 勿論、枝は伸びなかった。

 しかし、これは朝日の木だ。

 言うならば、太陽の木の親戚。

 そう、彼女らが出会った、あの太陽の木の親戚なのだ。

 数年おきに、実をつけるという朝日の木は。

 コーの歌に、かなうはずなどなかった。

 誰もが、呆然としてそれを見ただろう。

 満開になってゆく──朝日の木を。
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