アリスズc

次への一歩


「先に都に帰って、様子を見て来て欲しいんだよ」

 桃は、そうハレに言われた。

 復路は、本当にとても穏やかだった。

 夜盗には何度かあったが、月の勢力の障害はなかった。

 反逆者も、テルの推測通り消えてなくなったのだろうか。

 おかげで、都の隣の領地まであっさりと到着してしまう。

 ここで誕生日が来るまで、ハレは時間を過ごすのだ。

 リリューとホックスもその時まで彼と共にいるが──女性は、この旅ではいてもいなくても同じもの。

 先に都に入るのも、自由なのだ。

「はい、分かりました」

 モモは、彼の申し出を受けることにした。

 一年半ほど留守にしていた都では、さまざまなことが起きただろう。

 情報というものを、ハレは渇望しているのだ。

 それに。

 その仕事にかこつけて。

 早く、母に会いたかった。

 そんな自分の心を律しながら、桃はひとつ疑問に思ったことがあった。

「コーは…どうしましょう?」

 置いていった方がいいのか、連れていった方がいいのか。

 その判断は、桃には出来なかった。

 何しろ、コーはいままでハレと桃とずっと一緒にいた。

 旅の間だったから、それは当然だ。

 しかし、ここで二組に分かれることとなる。

 どちらに、コーを置いておくのか。

 その疑問に。

 ハレは、少し寂しげな目をした。

「連れて行ってやるといい。そして、トーがいたら…会わせてやってくれないか?」

 あ。

 トーと引き合わせることが、最初の目的だったではないか。

 それを、思い出したのだ。

 きっと、コーは変わる。

 いや、変わってもいい。

 ただ。

 いままでと同じように、桃を好きでいてほしかった。
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