アリスズc

「こんにちは、景子」

「こんにちは、コー」

 にこにこにこにこ。

 エンチェルクは、この二人の会合に立会いながら、つい苦笑を洩れさせてしまった。

 コーが型破りならば、太陽妃もやはり型破りだったのだ。

 そして、どちらにも天真爛漫さがあった。

 毎日を、幸せだと思って暮らしているのが、心の底からにじみ出ている。

「鳥を安全に森に返したいのですが、景子には出来ますか?」

 コーが木を見上げると、太陽妃もそれに倣った。

「この鳥は、私を信じてついてきてくれるかしら」

 さすがの彼女も、鳥は専門外らしく自信なさげだ。

「私が、一緒にいきます。きっと、彼女もついてきてくれると思います」

 懸命に話すコー。

 そんな彼女を、太陽妃はゆっくりと見つめた。

 硝子の向こうの瞳は、とても優しげで。

「それじゃあ、この鳥に聞いてもらえるかしら? 遠くて時間はかかるけれども、誰も人のいない森がいいのか、近くて人がいても追われる心配のないところがいいか」

 太陽妃は──とても魔法の存在に慣れていた。

 イデアメリトスの妃であり、トーの知り合いでもあり、そして、自分自身も何らかの力があるという。

 だから、そんな奇妙な質問でさえ、当たり前のように出来るのだ。

 さえずりが聞こえる。

 大きな鳥らしい、少し低くて長い音。

 その音を出したのは、鳥ではなくてコーだったが。

 樹上の鳥が、答える。

 エンチェルクの耳にさえ、答えに迷いがあるように聞こえるのは、コーに毒されたせいか。

 彼女が、首を斜めに傾ける。

 右に、左に。

「景子、近いところに、私は自由に行き来出来ますか? 出来るなら、人がいてもいいそうです」

「そう、ではあなたが自由に出入りできるようにしましょう」

 彼女の言葉に、太陽妃は笑顔で応えた。
< 325 / 580 >

この作品をシェア

pagetop