アリスズc
∞
荷馬車は、潮の香りのする町へ入る。
人々が、その瀟洒な荷馬車が誰のものであるかを知っているかのように振り返るのだ。
憧れの瞳で。
まだ、桃はロジアが何者であるか分かっていない。
しかし、町の人間からは好かれているようだ。
「さあ…着きましてよ」
屋敷に入る。
思ったよりは、小さな屋敷だ。
少なくとも、領主宅には見えない。
「ここは…私の家。主は私だから、遠慮はいらなくてよ」
不思議な表現で、彼女は桃を屋敷へといざなう。
彼女の趣味が、随所に現れた洒落た装飾。
「ありがとうございます…早速ですが、伯母に会わせていただけますか?」
それらを楽しく眺める余裕は、桃にはまだない。
気を抜くと、丸呑みにされそうな気配が、ロジアにはある。
最強の味方である伯母に、早く会いたかった。
「案内しておあげなさい」
彼女は、今度は勿体つけることなく、側仕えの女性に指示を出す。
二階へと、案内される。
扉の前。
側仕えはノッカーを鳴らし、「お客様をご案内しました」と告げる。
そして。
扉が。
開く。
「ああ…桃か。旅から帰った早々、すまないな」
伯母が、ソファのひじ掛けに腰かけて、こちらを見ていた。
片腕で、何とも軽そうに赤ん坊を抱え──乳をあげている。
伯母は、元気そうだった。
赤ん坊も、何も心配はいらないようだ。
その姿に、心の底からほっとした。
「伯母さま、ご出産おめでとうございます」
初めて、身内として祝いの言葉を言う。
桃が、その代表として来たのだ。
「ありがとう。お前の従弟だ…仲良くしてやってくれ」
従弟。
それは──男の子ということ。
荷馬車は、潮の香りのする町へ入る。
人々が、その瀟洒な荷馬車が誰のものであるかを知っているかのように振り返るのだ。
憧れの瞳で。
まだ、桃はロジアが何者であるか分かっていない。
しかし、町の人間からは好かれているようだ。
「さあ…着きましてよ」
屋敷に入る。
思ったよりは、小さな屋敷だ。
少なくとも、領主宅には見えない。
「ここは…私の家。主は私だから、遠慮はいらなくてよ」
不思議な表現で、彼女は桃を屋敷へといざなう。
彼女の趣味が、随所に現れた洒落た装飾。
「ありがとうございます…早速ですが、伯母に会わせていただけますか?」
それらを楽しく眺める余裕は、桃にはまだない。
気を抜くと、丸呑みにされそうな気配が、ロジアにはある。
最強の味方である伯母に、早く会いたかった。
「案内しておあげなさい」
彼女は、今度は勿体つけることなく、側仕えの女性に指示を出す。
二階へと、案内される。
扉の前。
側仕えはノッカーを鳴らし、「お客様をご案内しました」と告げる。
そして。
扉が。
開く。
「ああ…桃か。旅から帰った早々、すまないな」
伯母が、ソファのひじ掛けに腰かけて、こちらを見ていた。
片腕で、何とも軽そうに赤ん坊を抱え──乳をあげている。
伯母は、元気そうだった。
赤ん坊も、何も心配はいらないようだ。
その姿に、心の底からほっとした。
「伯母さま、ご出産おめでとうございます」
初めて、身内として祝いの言葉を言う。
桃が、その代表として来たのだ。
「ありがとう。お前の従弟だ…仲良くしてやってくれ」
従弟。
それは──男の子ということ。