アリスズc
∞
伯母の部屋に戻ると。
リクが、次郎を抱いていた。
あの男が、少し困ったように小さな身体を、ぎこちなく抱いている。
珍しい光景だった。
「ああ、戻ったか。ロジアはどうだった?」
伯母は、窓辺に立っていた。
ちょうど。
庭が一望できるところ。
ロジアがハチに絡んでいたのも、桃がそんな彼女と共に屋敷に戻ったのも、きっと見ていたのだろう。
「隙間を見て来ました」
桃の出来ることは、やった。
毒と引き換えに、見えたものもあったのだ。
彼女の祖国との隙間。
その隙間が、想像よりも遥かに大きいことが分かった。
ロジアは、本当の意味でこの国の国民になっていないが、自分の祖国は憎んでさえいる。
「夕日様が…」
リクは、抱いた次郎を見つめながら、ひとつ言葉を紡いだ。
「夕日様が、こうおっしゃってました。『あの女は、暇にするな。誰かに必要とされ、忙しければ忙しいほど良い仕事をする』と」
ひと呼吸おいて。
「逆に、『暇にした途端、誰かを巻き添えにして死ぬか、国をひっくり返すほどの悪事を企み出す』とも」
強烈な、善と悪の裏表。
歪んだ心を、かろうじて善に維持しているのは、この町の人たちの彼女への愛。
同じような強烈な力を、カラディにも見た。
持て余すほどの力を、彼らは持っている。
それを決壊させずに、この国のために使ってもらえるならば、とてつもない推進力を生み出せるに違いないのに。
もやもや、する。
希望を形に導くことが出来ない、自分の未熟な能力に。
桃は、もどかしい気持ちでいっぱいになるのだった。
伯母の部屋に戻ると。
リクが、次郎を抱いていた。
あの男が、少し困ったように小さな身体を、ぎこちなく抱いている。
珍しい光景だった。
「ああ、戻ったか。ロジアはどうだった?」
伯母は、窓辺に立っていた。
ちょうど。
庭が一望できるところ。
ロジアがハチに絡んでいたのも、桃がそんな彼女と共に屋敷に戻ったのも、きっと見ていたのだろう。
「隙間を見て来ました」
桃の出来ることは、やった。
毒と引き換えに、見えたものもあったのだ。
彼女の祖国との隙間。
その隙間が、想像よりも遥かに大きいことが分かった。
ロジアは、本当の意味でこの国の国民になっていないが、自分の祖国は憎んでさえいる。
「夕日様が…」
リクは、抱いた次郎を見つめながら、ひとつ言葉を紡いだ。
「夕日様が、こうおっしゃってました。『あの女は、暇にするな。誰かに必要とされ、忙しければ忙しいほど良い仕事をする』と」
ひと呼吸おいて。
「逆に、『暇にした途端、誰かを巻き添えにして死ぬか、国をひっくり返すほどの悪事を企み出す』とも」
強烈な、善と悪の裏表。
歪んだ心を、かろうじて善に維持しているのは、この町の人たちの彼女への愛。
同じような強烈な力を、カラディにも見た。
持て余すほどの力を、彼らは持っている。
それを決壊させずに、この国のために使ってもらえるならば、とてつもない推進力を生み出せるに違いないのに。
もやもや、する。
希望を形に導くことが出来ない、自分の未熟な能力に。
桃は、もどかしい気持ちでいっぱいになるのだった。