アリスズc

 夕日とリクが旅立った、しばらく後。

 桃は、町の孤児院へと向かっていた。

 二つの縁が、彼女を時折ここへと導いたのだ。

 ひとつは、ロジア。

 もうひとつは。

「あら、来てくださったんですね」

 明るい日の差す庭で、子供たちに囲まれる片足の女性。

「あ、モモだー!」

 友達になった小さな子供たちに、沢山とびつかれる。

 みな、とても元気だ。

「助かったわ…今日は一人お休みで、困っていたの」

 松葉杖をつきながら、彼女──テテラがゆっくり近づいてくる。

「お客が来ているので、少し行ってきてもよいかしら?」

 子供たちにもみくちゃにされながら、桃は大丈夫ですと頷きで返した。

「やな奴が来てるんだよ」

 一番大きい男の子が、建物へと戻るテテラの後ろ姿を見つめ、ぶすっとした声で言った。

「何でー? カッコイイじゃない」

「かっこよくないよ。おっさんじゃん」

 男の子派と女の子派で、微妙に食い違う論争が始まる。

「無精ひげが、かっこいいよねー」

「えー、私はそっちの人より、きりっとした方が好きー」

 女の子の間でも、食い違いが発生しているようだ。

 口を挟みづらい話だなあと、桃が、ちっちゃい子を振り回しながら遊んでいると。

 建物から出てきた二人の男に、呼吸が一瞬止まった。

 二人とも知っていたワケではない。

 だが、片方は確実に知っていた。

 あー、あれが無精ひげの方のおっさんね。

 いやな納得をしながら、桃は視線の先に──カラディを見たのだ。

 テテラと関わりのある男だ。

 だから、会いに来たとしてもおかしくはない。

 子供たちの様子からすると、何度か来ているようだ。

 ということは、もう一人も。

 桃は、カラディを放置して、もう一人の男を目に焼き付けようとした。
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