アリスズc
光双つ
∠
夜が──明ける。
テルは、既に準備を整え終えていた。
彼の周囲には、三人の男女。
「準備、完了致しました」
一番、大荷物を背負うのは、ビッテ。
腰には、この国特有の幅広の剣。
肩には荷物と、短弓。
テルは知らなかったが、彼は弓の腕もいいらしい。
将来的に、兄の剣術道場を継ごうと考えていたらしく、剣以外の技能も含め、ひたすらに腕を磨いていたようだ。
「久しぶりですよ、こんなに早く起きたのは」
気だるそうに首を動かすのは、ヤイク。
腰には、短剣ひとつ。
彼は、文官を貫く気なのだろう。
あれほどウメやエンチェルクと付き合いがありながらも、この男は決して向こう側に染まり過ぎなかった。
それどころか、年齢を重ねるごとに、主導権を握っていったのだ。
政治的能力に、一点集中している男。
そして。
「………」
終始無言の、エンチェルク。
ウメの腹心であり、キクに帯刀を許された女性。
彼女は、心を向こうの国に奪われ、しきたりをこちらの国に縛られた人間だ。
だから、この貴族や貴族の息子のいるところで、決して余計な口を挟むことは出来ない。
たとえ、テルが平等に扱うと言ったところで、鵜呑みにすることはなかった。
ただ。
初顔合わせの時は、彼女は誰の方も見ようとはしなかった。
石像のように、ただ立っているだけ。
少し、変わったか?
そう感じた。
彼女は、旅をする人間たちを見ていた。
何かを、そこから見出そうとするかのように。
「行こうか」
これが──テルが命を預ける三人。
夜が──明ける。
テルは、既に準備を整え終えていた。
彼の周囲には、三人の男女。
「準備、完了致しました」
一番、大荷物を背負うのは、ビッテ。
腰には、この国特有の幅広の剣。
肩には荷物と、短弓。
テルは知らなかったが、彼は弓の腕もいいらしい。
将来的に、兄の剣術道場を継ごうと考えていたらしく、剣以外の技能も含め、ひたすらに腕を磨いていたようだ。
「久しぶりですよ、こんなに早く起きたのは」
気だるそうに首を動かすのは、ヤイク。
腰には、短剣ひとつ。
彼は、文官を貫く気なのだろう。
あれほどウメやエンチェルクと付き合いがありながらも、この男は決して向こう側に染まり過ぎなかった。
それどころか、年齢を重ねるごとに、主導権を握っていったのだ。
政治的能力に、一点集中している男。
そして。
「………」
終始無言の、エンチェルク。
ウメの腹心であり、キクに帯刀を許された女性。
彼女は、心を向こうの国に奪われ、しきたりをこちらの国に縛られた人間だ。
だから、この貴族や貴族の息子のいるところで、決して余計な口を挟むことは出来ない。
たとえ、テルが平等に扱うと言ったところで、鵜呑みにすることはなかった。
ただ。
初顔合わせの時は、彼女は誰の方も見ようとはしなかった。
石像のように、ただ立っているだけ。
少し、変わったか?
そう感じた。
彼女は、旅をする人間たちを見ていた。
何かを、そこから見出そうとするかのように。
「行こうか」
これが──テルが命を預ける三人。