アリスズc

 オリフレアリックシズ・イデアメリトス・エッゼルト18。

 テルは、彼女の名を思い浮かべた。

 傍系の番号は、生まれた当時の直系の番号に合わせられる。

 だから、オリフレアの母は16だか、彼女自身は18を手に入れることが出来た。

 これは、幸運だった。

 何故なら、彼女はテルとハレが誕生して一週間ほどして生まれたからだ。

 もし、1日でも先にオリフレアが先に生まれていたら。

 彼女の番号は17となり、いくら年の差があろうと父に殉じなければならなかったのである。

 だが、オリフレアは自分の母をひどく嫌っている。

 ここまでとは、テルも思ってはいなかったが。

 心当たりが、ないわけではない。

 ひとつは、父親のこと。

 ひとつは、母親自身のこと。

 父親は、便宜上、イデアメリトスの傍系の血筋の男ということになっている。

 便宜上、というのは──それは父のはからいだからだ。

 何故ならば。

 片親が明らかにならない状態で、その子をイデアメリトスの旅に出すことは出来ないから。

 父親は、身分と魔法の力のない者だと聞いている。

 だが、その娘はイデアメリトスの力を受け継いでいた。

 彼女を、イデアメリトスとして登録するには、父親が必要だったのだ。

 髪を切って、ただの血筋として生きることは出来たのだが、オリフレアは登録された。

 そんな彼女の母親は。

 非常に豪傑だった。

 子供の頃、テルは勿論会ったことはある。

 その力強い、そして逆から見れば自分勝手な言葉や振る舞いは、幼いオリフレアを傷つけることも多かったのだろう。

 旅が好きな人で。

 ちょくちょく、オリフレアを置いて世界中を旅していたらしい。

 そして、彼女は母を嫌った。

 亡くなって──今もなお。
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