アリスズc
∠
違和感と悪意に目が覚める──真夜中。
野営中、テルが飛び起きた時、既にビッテは剣を抜いていたのだ。
エンチェルクは、刀こそ抜いていないが、テルを瞳で気遣っている。
大丈夫だと、彼女に視線を返す。
ヤイクは、一部目を覚ましたが、うるさそうに半身を起こすだけだった。
ビッテやエンチェルクを信用しているというより、適材適所を貫いているといったところか。
肝の据わり方だけは、たいしたものだ。
そうだな。
テルも、ヤイクに倣うことにした。
まだ、旅は始まって間もない。
ビッテがいるのに、エンチェルクがでしゃばるのは、彼に対して失礼だし、自分が出るのは尚更彼の立場がないだろう。
信用することも、大事なのだ。
違う方向を向いている彼らを、自分の方に向かすためには。
だからテルは、ただ瞳を彼の剣士に向けるだけだった。
ざわつく声も隠せない、まとまりのない夜盗だ。
これくらい、軽く乗り越えてもらわなければならない。
「……!」
ビッテは――力強く、そして鮮やかだった。
息継ぎの音を、まるでうなり声のように響かせながら、剣を振り回す。
そう、振り回すのだ。
そこに、無駄がないわけではない。
たが、無駄を補って有り余る速さと強さと、それをすべて支え、吸収できる強靭な足腰を持っているのだ。
ずしんと、地面を踏みしめたかと思うと、ぶった斬っている。
切れ味なら、到底日本刀に及ばないこの国の剣で、だ。
圧倒的な力で、引き裂いているのである。
エンチェルクもテルも、ただ彼の豪腕を見ていた。
頼もしいことだ。
テルの安眠は――それほど長い時間、邪魔されることはなかった。
違和感と悪意に目が覚める──真夜中。
野営中、テルが飛び起きた時、既にビッテは剣を抜いていたのだ。
エンチェルクは、刀こそ抜いていないが、テルを瞳で気遣っている。
大丈夫だと、彼女に視線を返す。
ヤイクは、一部目を覚ましたが、うるさそうに半身を起こすだけだった。
ビッテやエンチェルクを信用しているというより、適材適所を貫いているといったところか。
肝の据わり方だけは、たいしたものだ。
そうだな。
テルも、ヤイクに倣うことにした。
まだ、旅は始まって間もない。
ビッテがいるのに、エンチェルクがでしゃばるのは、彼に対して失礼だし、自分が出るのは尚更彼の立場がないだろう。
信用することも、大事なのだ。
違う方向を向いている彼らを、自分の方に向かすためには。
だからテルは、ただ瞳を彼の剣士に向けるだけだった。
ざわつく声も隠せない、まとまりのない夜盗だ。
これくらい、軽く乗り越えてもらわなければならない。
「……!」
ビッテは――力強く、そして鮮やかだった。
息継ぎの音を、まるでうなり声のように響かせながら、剣を振り回す。
そう、振り回すのだ。
そこに、無駄がないわけではない。
たが、無駄を補って有り余る速さと強さと、それをすべて支え、吸収できる強靭な足腰を持っているのだ。
ずしんと、地面を踏みしめたかと思うと、ぶった斬っている。
切れ味なら、到底日本刀に及ばないこの国の剣で、だ。
圧倒的な力で、引き裂いているのである。
エンチェルクもテルも、ただ彼の豪腕を見ていた。
頼もしいことだ。
テルの安眠は――それほど長い時間、邪魔されることはなかった。